原発のウソ

先日カフェ豆で行われた「みらいのエネルギーのはなし」というお話し会には、たくさんの方にきていただきました。ほんとうにありがとうございました。そしてその内容のすごかったこと。目からウロコとはこのことです。そのなかのほんの一部を要約しますと、まず「今の日本の電気は3分の1を原発でまかなっている」これは誰でも知ってることです。だから原発反対と言っても「じゃあ、この3分の1の電気はどうするんだ。むやみに反対というだけじゃ何も解決しないじゃないか」というのが、ふつうの人の考え方でしょう。だから今回のような事故になっても「少しずつ電気を使わない生活にシフトしていくしかないかなあ」ぐらいのことしか考えられない。私もそう思っていました。ところがです。ウソだったんですね。たしかに今の原発でつくられている電気は全体の3分の1です。でもその3分の1の電気は、火力や水力発電所でもつくれる量なんだそうです。つまり今の日本で、いっぺんに原発がなくなったとしても、電気って足りるんです。今日本にある火力発電所水力発電所の稼働率をあげれば事足りるんですね。逆に言えば、今の日本の電力事情というのは、火力と水力の稼働率をごっそり下げて、そのぶんを原発でつくっている。夏の大量に電気を使う時期になったとしても、原発以外の発電所の電力でちゃんとカバーできるという、ちゃんとしたデータに基づいたおはなしでした。
結局ですね、ないならないでもよかった原発を無理矢理つくったおかげでレベル7という最悪の事態になったというのがほんとのところだし、原発政策を押し進めてきた政府や電力会社や大手電気関連企業やゼネコンがいちばん知られたくなかったことでしょう。だからこれまでは「原発がないと日本じゃ電気が足りないからしょうがないじゃないか、それとも今から電気をつかわない生活ができるのか」って、なかば逆切れぎみに脅されていたような気がします。でもそれは間違いだった、っていうかウソだったわけで。建設費も維持費も開発費も秘密保持のためにばらまく膨大なお金も、そして事故になったときのリスクも桁違いに大きい原発をつくって誰が得しているのかを考えなければいけません。原発を53個所もつくらなかったら私たちが払っている電気代ももっと安くなったはずです。そこから出る大量の核廃棄物の処理方法だってきまってはいないし、たとえ決まったとしても、そこにまたたいへんなお金がかかる。いったんつくったら、取り壊しても安全な状態になるまで何百万年もかかるものを、これからもつくり続けていいものかどうか、そんなことをなんとなく「しょうがないかも」と見過ごしてきた私たちだったというわけです。
今回のように最悪の事故がおこっても、ひたすら事態の深刻さを隠し続けていたホアンインとかトーデンとか政府。3月11日に地震が起きて、14日と15日の時点で原発から漏れた放射能チェルノブイリ並みだったということを一か月経ってからやっと認めた政府の態度でよくわかりますよね。それまでひたすら「すぐに健康に害をおよぼすレベルではない」と言い続けてきた。それは一見パニックや風評被害をおこさないような配慮のように見えて、じつは原発被害がそれほででもないというイメージを崩したくなかったと、今になると思えます。たしかに「すぐに」はないかもしれないからウソじゃない。でもその後どうなるのかなんて絶対言わない。原発廃炉しても撤去してしまうのに10年以上かかって、そこから放射能が消えるのに100万年かかるなんて言わない。ウソは言わないけど都合の悪いことも絶対言わないし、とうぜんマスコミも書かない。しかし私たちはそれはそういうものだと判断して、ちゃんとチェックしていかないといけないんだということがよくわかりました。あまりに大きな犠牲ですが。ないとしょうがないと思わされてきた原発から、なくてもよかった原発をこれからどうしていくのかを、私たちはしっかりと見ていかなければならないでしょう。ないならないでよかった原発のために土地を追われ職をなくし、健康不安が一生つきまとう多くのひとたちの無念さを受け止める力が、この国にあるのでしょうか。
 
4月24日(日)午後6:00から、チェルノブイリ原発内部や旧ロシアのウラン採掘場やコソボサラエボ、そして広島、長崎を撮り続けているオランダの写真家カリー・マルケリンクの写真展とトークセッションを行います。ひとりでも多くの方に来ていただきたいです。定員40名、要電話予約095-825-4455。ドリンク付き1000円です。ただいま受付中です。トークセッションの相手はKTNテレビ長崎の取締役であり世界的ドキュメンタリー作家の山本正興氏です。はからずもタイムリーすぎるほどタイムリーなイベントとなってしまいました。これから他人事ではすまされなくなった日本の大きな問題を考えていく上でのきっかけになればと思います。また写真展は5月30日まで開催し、作品は通常の10分の1の価格で販売し、その売り上げ金は、すべて東日本大震災義援金として寄付させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。