ありがとうございました。

うひゃあ〜!みなさま、ありがとうございました。なにがありがとうかって、先週土曜日の吉田隆美術作品展のオープニングパーティにたくさんの皆さんが、それも時間をきっちり守っていただいて、スタートの午後7:00にはカフェ豆はいっぱいの人で賑わっていて、当の私は買い出しから帰ってきた途端に皆さんからの拍手でびっくりでした。その後、岡野さんの弾き語り、グッドマンさんの凄いスラップベースに乙女(いろんな意味で)たちはうっとり、おやじたちは羨望の眼差し。そして初登場のアコーディオンのロコさんは、懐かしい昭和の音を披露してくれました。ご本人のキャラもなかなか個性的で、これからのフリーライブでも楽しみです。そのあと松尾薫さんのバッハ。心が洗われますねえ〜。そして今回割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションを獲得した薫さんの一人娘のルーちゃんのピアノ。いやあ、このときばかりはみんな耳をダンボにして聴き入っていました。この歳にしてすごい表現力。末恐ろしいとはこのことです。その後、みなさん大いに盛り上がり、たのしい夜は夜中の1時過ぎまで。ほんとにありがたいことです。また、私が一方的にお祝い禁止令を出したがために、用意していた方まで気を遣わせてしまいまして、申しわけありませんでした。みなさま何卒ご理解ください。
あ〜〜、それから申し訳ないことがもうひとつ。オープニングパーティに来られた方には、私の直筆サイン入りの作品をプレゼントと言っていたのに、パーティーがいきなり大賑わいですっかりお渡しするのを忘れていて、パーティー中盤で思い出したために、早い時間で帰られた方にはお渡ししていません。申しわけありませんが、ついでの時にでもお店に来られましたら差し上げますので、お申し出ください。よろしくお願いします。
 
はい、ということで、楽しい夜はあっという間に深夜となり、午前2:00に帰宅。でも店主は午前4:00から松浦市へ車を飛ばして取材の仕事をして、午前11:00過ぎにはKTNギャラリーに舞い戻るという強行スケジュール。でもほんとに前夜が楽しかったので苦になりません。さすがにギャラリーでは居眠りしそうになりましたが、いろんな方が来てくださって、いろんな話をして楽しかったです。で、そんな感じでしたので、ブログを書くというかパソコンの前に座る機会が今までなくて、皆様へのお礼さえ書けずにいた次第です。
さて先週の土曜日から始まりましたKTNギャラリーでの吉田隆美術作品展。このとんでもない炎天下にもかかわらず、おかげさまでいろんな方に来ていただいています。屋外とは違って、ギャラリーの中はめちゃ涼しいです。まるで別世界です。是非ぜひお気軽におたちよりください。ギャラリーの奥には、ゆったりしたラウンジチェアーで冷たい飲み物もご用意しています。もちろんタダです(笑)。
ちょっとだけご紹介しますね。でもこんな写真では雰囲気すらわかりませんけどね。会場は田中拓也くんがつくってくれたマルチチャンネルの音が全体を覆っていて、まさに別世界をつくりだしています。ほんとに落ち着ける心地よくて、でも緊張感のある濃密な空間です。
会場は長崎市五島町にあるテレビ局KTNテレビ長崎の社屋の一階にあります。こんなところです。

で、入り口には特別にデザインさせていただいた看板があります。

で、中に入るとエントランスがこんな感じ。よくわかりませんね(笑)

そこから中に入ると、外とは違っていきなりクーラーの涼しさにホッとします。で、まず出迎えてくれるのは巨大な月のスクリーン。

もうこれだけで涼しくなっちゃいます。この作品は高さが3.5メートルあるので、この会場では作品の下のほうが床についちゃってます。もっと天井の高いところにあると、また違った幻想的な感じで見ることができます。でもここでも外からの光をバックにして、月の映像を透過光で見ることができますからいい感じですよ。その奥には27年前に制作した作品「place'82 関わりとして」というタイトル。

綿の布に日本画のドーサ引き、つまり明礬と膠をお湯で溶いて布にしみこませます。その上からアクリルのジェッソに色を調合したものを塗って、その上からせっせと鉛筆で描きこんだものです。黒いところはみんな鉛筆です。鉛筆何本使ったかわかりません(笑)。高さ160センチ、幅4メートルです。これは第五回現代日本絵画展に入選しました。あとで聞いた話ですが、当時あの展覧会に学生の分際で通ったヤツがいるって長崎で話題になっていたんだそうです。私が佐賀の学生で、当時長崎でこの展覧会に入選した人はいなかったんだそうです。自慢じゃないですが(笑)。
この作品の正面にはその翌年につくった作品「place'83 romantic system」があります。

これは美術専攻科つまり修士課程のときの卒業制作です。見てのとおりミケランジェロの有名な素描をおっそろしく拡大して模写した画面に立方体のグリッドを鉛筆でぎっしり描き込んだものです。グリッドって、人物の目のあたりを拡大しますとホラ、こんな感じです。

完全にアナログ作業です。今思えばよくまあこんな気の遠くなるような作業を飽きもせずにやったもんだと思います。今の環境でコンピュータでやれば30分ほどでできちゃうんですけどね(笑)。でもこのマチエルはデジタルでは絶対表現できません。手づくりの画肌に手描きの線だからこそできる画面です。これは是非実物を見て感じていただきたいです。幸いなことに26年前の作品ですが、ほとんど退色もせず、破れもせずに残っていました。
そこからさらに奥に行くと写真をつかった作品シリーズ「存在の記憶へ」が数点あります。

私の作品は、とくに40歳代の作品は写真を使ったものが多いので、私を写真家だと思っている人も多いようですが、私は写真家ではありません。あくまで写真をつかった美術作品です。その証拠にカメラについては何も知りません。いまだに絞りがどうとか言われてもチンプンカンプンだし、いつもオートモードにしてシャッターを押すだけです。それにこれらの作品の半分は7年前に当時2万円程度だった小さなデジカメを使っています。今でもカメラはキャノンのイオスキスだし、レンズもタムロン1本だけ。これで写真家じゃないことはおわかりですね。今の美術界で写真を素材にするというのはまったく珍しいことではありません。有名無名を問わずどこにでもある美術作品としての表現形式のひとつです。ところが偶然にも私と同姓同名の写真を趣味にしている方が島原方面にいらっしゃるようで、私はまったく面識がないのですが、ときどきその方と間違えられたりします(笑)。

その横に、というか今回の作品でいちばん場所をとっているのがこの作品。「風景―夢のつづき」です。高さ4メートル、横幅9.6メートルあります。とうぜん会場の高さが足りないので、下のほうは床に這わせています。これがまともに展示できるのは長崎県内では県の美術館だけです。九州でも数カ所でしょう。なんでそんなどこにも展示できないような大きな作品をつくったのかというと、仕方ないんです(笑)。自分の気持ちの中で、これくらいの大きさがないといけなかったんです。それはきっと実物を見てもらえたらわかってもらえると思います。そして実際に見ていただいた方は、みなさんまるで申し合わせたように「気持ちいい」と言ってくれます。この大きさなのに不思議に圧迫感がまったくなくて、気持ちがすっきりしました。というのが大方の感想でした。ありがたいことです。
展示している作品はあと数点ありますが、今日はこれくらいにしておきます。とにかくこの空間をじかに感じていただくのが一番だと思いますし、私の作品は、それぞれの絵や写真が作品なのではなくて、これらをこの空間で見る人がいること全体で作品としてなりたちます。素材がどうとか色がどうとかはいくらでも解説できますが、それは二次的なことであって、これらを見る人の気持ちの中の出来事がわきあがることそのものに意味があると考えています。もしよかったら、ふらりと覗きに来てみませんか?
 
昨日と今日、ギャラリーでお客様がいないときに、妻が買って読んでいた小説「告白」を読みました。世間の話題作を買って読むような私ではないので、こんなことがなければ間違いなく読まないようなものですが、読んだら意外と面白かったです。「なんだ村上春樹以外の小説も読めるじゃん」と自分でびっくりでしたが、たしかに読みやすいというのはヒットの要因なのでしょう。小説でも美術作品でもヒットするしないと良い悪いは別の話です。あ、いやこの小説はヒットしたけど良くないというつもりはないですよ。面白かったです。よくできた小説だと思います。いろんなことを適格にふまえてるなあと感心しました。2度読もうとは思いませんけどね……ありゃ、言っちゃったよ(笑)。
たぶん、いや、これは自分勝手な想像ですが、心にズシンとくるものとの出会いって、コマーシャルには乗らないと思います。どんな時代でも。逆にくだらないものがヒットすることはあると思います。それは社会の構造が経済的な利害中心で動いているかぎり変わらないんだと思います。こないだの参議院選挙だって、すべては経済的な利害関係で動いている。だから名前だけのタレント候補やナントカチルドレンとかナントカガールズなんかが平気で出てくるんだと思います。まともに考えればバカばかしいだけの話が現実に、それも何の悪びれた風もなく行なわれている。いろんな人の利害を背負わされてるだけなんだって、わかっててやるのか、わからなくてやらされてるのかわかりませんが、わたしたちはそれだけ未熟な社会に住んでるんだということを前提に生活していかないと、その未熟さにいつのまにか巻き込まれて一生を終わることになると思います。
でも、世間一般にもてはやされるようなものとは違うところで、ほんとうに大切なものやことが世の中にはあるんだということの実感こそが大事だと思います。もちろんそれは人によって違うと思うし、同じだと言うことのほうが不自然です。で、ほんの少しでいいから、誰かと共有できる価値を見つけることができれば、それはひとつの幸せなんじゃないかと思うのです。今回の個展に来ていただいて、たとえひとりの人であったとしても、なにかしらその人の琴線にふれることができたとしたら、こんなに幸せなことはないと思っています。

ここまで読んでくれてる人はそんなにいないと思いますが(笑)、明日は火曜日なのでカフェ豆のランチはお休みです。営業は午後1:00からとさせていただきます。もちろんカフェ豆でも吉田隆美術作品展は開催中です。是非どちらも足を運んでください!