降りしきる雪を見た

先日の「津軽三味線 石井秀武ライブ」。

和やかに唄と演奏が続き

最後は怒濤の三味線バトルになだれ込む!
さすがに全国優勝経験の二人。

予想をはるかに超えたテンションと完成度の高さ!(小室哲哉ではありません(笑))
ほんとうに素晴らしい演奏でした。じつはライブ終了後も三味線のお二人は全力疾走直後のように息をするのがやっとと言った感じで、ほんとに真剣勝負の演奏なんだと実感しました。私がまだ若い頃に、一度すばらしい津軽三味線の演奏に出会った事がありました。真っ暗なステージの中央に、一人だけスポットライトに照らし出され、目を閉じて延々と弾きける姿を見ながら、いつしか真っ暗なはずのステージいっぱいに降りしきる雪の姿を見たような気がしたのを今でもはっきりと覚えています。いわゆる民謡とは基本的に何かが違う、何と言いますか精神的なものへストレートに届こうとする切迫した何かが確かにあると思います。西洋風に言えばインプロヴィゼーションを基本としたミニマルミュージックということかもしれません。私が津軽三味線がなんともエモーショナルなジャズに近いシビアな音に思えるのは、不遇の時代を乗り越えて、なおかつ人々の心に深く入っていく辛辣さと同時に包容されるような優しさが、あの無数の音の波によって引き出されるからではないかと思います。今回の演奏も、そうしためくるめく音の波のその向こうに、いつか見た無数の雪の舞う情景が浮かび上がってきたように思いました。演奏していただいた石井秀武さん、石井秀岱さん、歌手の大宮絵里奈さん、ほんとうにありがとうございました。こうした伝統を継承しながら新たな文化をつくりあげていく若い人たちに微力ではありますが精一杯のエールを贈りたいと思います。
 
なお、先日のブログのコメント欄にも書きましたが、私の言葉が中途半端で、ライブ会場での様子を知らない方は、いったい何があったんだろうとあらぬ想像を膨らませると思いますし、お店でとんでもないことが起こったんじゃないかとか、カフェ豆に来たことのない方が、このブログだけを読んで、あそこはとっても気分の悪くなる店なんだと一方的に思われるのも悲しいですし、とくにネット上での断片的な情報はパブリックに増幅したりして、場合によってはお店にとって命取りになりかねません。ですからこのブログを読んでいただいてる方へは少なくとも誤解のないようにあえて申しますと、今回のライブ中、2名のお客様が素晴らしい演奏にかなりエキサイトされて、その騒々しさに気分を悪くされた他のお客様がいらっしゃいました。そのエキサイトぶりは、クニヒロさんが「一興」とおっしゃっていただいたように大衆民謡酒場であれば何の問題もない好意的なものですが、やはりあの場ではそれを快く思わないお客様がいらした事もよくわかります。普段クラシックやジャズの流れる静かなカフェなのですから、お酒の入るライブではそうしたリスクがあるんだということも実感しました。ただそのお二人にしてみれば「いつもの音楽の楽しみ方」であり日常ですので、仮にお店側からマナー違反とか静かにしろと言われたとしたら、逆にとても心外なのかもしれません。しかし津軽三味線の深遠な世界を期待されて来られた方にとってはぶちこわしかもしれません。それもわかります。とってもよくわかります。そしてあの場では店主としてお客様に演奏を最後まで堪能していただく事を選択したわけです。同席したお客様の騒々しさに気分を害されたお客様には本当に申しわけありませんでした。ただこのブログは一日200から300のアクセスがありますで、お店のマイナスなイメージだけが増幅していくのも忍びないのです。ですからこうしてあえてお知らせさせていただきました。逆に今回のことは津軽三味線という音楽の広いキャパシティの現れだったとも言えます。幅広い世代に、それぞれの受け止め方、感じ方のできる音楽なのだということもできるでしょう。実際に今回のライブに来ていただいた30数名のお客様の中には小学生から85歳の方までいらっしゃいました。すでに何人もの方から「よかった、すばらしかった」とのメールをいただいたり、後日あのときの感動を話しにお客様が何人もお店においでになられました。おそらくこれほど世代や趣味思考に幅のある、つまり日常感覚に関してのギャップのあるお客様が一堂に集うコンサートも少ないだろうと思います。そして演奏自体はみなさん素晴らしかったと声を揃えていらっしゃることが何よりうれしかったです。今後もカフェ豆はジャンルを問わずすばらしいライブの企画をしていきたいと思っております。できればすべてのお客様と演奏者が一体感を実感できるライブを目指したいと思っております。ときにはままならぬこともあるし、逆にそうしたことがあってこその文化の醸成ではないでしょうか。店主がまだまだまったく未熟者の致すところであり、今後も何かとご迷惑をおかけするかと思いますが、どうか広い心で見守ってやってください。よろしくお願い致します。