遠い視線

長崎ではおくんちを境いに途端に秋になります。それまでは夏のなごりで汗ばむほどですが、これからしばらくはとっても過ごしやすい時期ですね。今日は体育の日で祝日。カフェ豆は月曜はお休みです。カフェ豆店主としては忙しくはないのですが、デザインスタジオ ヨンエフのデザイナーとしては休みもへったくれもない毎日(ところで「へったくれ」っていったい何?)。今夜は演出家の青井陽治氏とポスターの打ち合せ。ちょっとドキドキ(笑)。その前にやらなくちゃいけない他の仕事を片付けてと。
 
おかげさまでカフェ豆は2年目に突入し、その名をじわじわと広げつつありまして、みなさまのご期待にお応えしようと常にいろいろと模索中であります。バール計画も含めて、山ほどメニューやイベントのアイデアはあるのですが、なんせ私とかみさんと二人のバイトの女の子でやってるもんですから、そうそういろんなことはできません。できませんとはいっても、いままでかなりいろんなことをやってきてしまいましたが、あと2ヶ月ちょっとで50歳になる店主は、さすがに身体がついてこないです(笑)。そこでどうしたものかを考えるとですね、いろいろ無理をしてなんでもかんでもやるよりは、狙いをギューッとしぼって、集中的に力を入れてクオリティを上げることで、お客様のニーズにお応えする。これがいいんじゃないかと。そういうコンセプトで行くと決めると、いままでのようにああだこうだと余計なことを考えなくて済むわけです。「なんでもあります誰でも来てください」ではなく「これだけですけどどこにも負けません」のほうがやっぱりいいんじゃないかと。いや、開店当初からそうしたコンセプトではあったのですが、実際に経営していくなかで、あれもあったらこれもなくちゃ、なんて考えてしまうんですね。たしかに理想と現実は違います。実際にやってみなきゃわからないことばかりでしたから。で、1年間やってみて思うのは、やはり無理して間口を広げるのではなくて、もしかしたらお客様は減るかもしれないけど、カフェ豆でしか味わえない空間を頑固につくっていきたいと思っています。そう、極北のカフェを目指しているカフェ豆は、ちょっと南に寄り道してしまったのかもしれません。これからしばらく北へ舵をとりなおして頑張っていきます。みなさまよろしくお願い致します。
 

現在開催中の「納富司写真展 旅の途中」は10月26日(日)までです。



バリ島とニュージーランドで撮られたモノクロ写真を20点展示しています。納富さんの撮る風景はモチーフが変わっても、みなとても静かで透明感があります。旅先で出会った風景をそのまま切り取るのではなく、心のフィルターを通すことで、とても静かな別世界ができあがります。その場所の何かを訴えるのではなく、その風景をモチーフにして何か別のファンクションをつくりだそうとしているのではないかと思いました。その何かとはうまくは言えないのですが、たとえば「遠い視線」とでもいいますか、ここにいてここにいないというか、それはぱっと見には見逃してしまいそうなささやかな風景を通すことによってわずかに感じ取ることのできる空気。そうした微妙で繊細な質感が納富さんの写真の魅力ではないかと思いました。で、それにしては構図があまりに決まりすぎているせいか、見る人によっては小ぎれいなだけの風景写真にしか見えないのかもしれません。無意識のうちにきれいにフレーミングしてしまう、それはデザイナーという納富さんの職業病みたいなものかもしれません(笑)。同じデザイナーとしてこのへんのジレンマはよくわかります。だからといって構図やピントを意図的に崩すと、ただのへたくそな写真と見分けがつかなくなる。きっと「どう見られるのか」ということを常に意識しなければならないデザイナーとしての納富さんのなんともしがたいところかもしれません。あ、これは私の勝手な思いこみです、失礼。読書の秋、芸術の秋。このおもいきり月並みな秋の修辞句がいまだに使われているのは、やはりもの思いにふさわしい季節だからでしょう。カフェ豆で美味しいコーヒーを飲みながら、納富さんの消え入るような儚い風景写真の世界にひたるのもいいのではないでしょうか。
 
いやいや、長崎という街はほんとに狭いもので、初対面の人でも「だれそれのお友達」だとか「お父さん同士が同級生」とか、そんなところでかんたんにつながりを見つけてしまうところです。で、今話題になっているノーベル賞に決定した下村博士が長崎出身だったというところまでは「ふ〜ん、そうなんだ」と思うくらいでしたが、先日高校の同級生からメールが来まして、同級生のY君の叔父さんんがノーベル賞に決定したとのこと。で、よく聞けばその同級生のY君も中学生の時に一ヶ月間ほどアメリカにいる下村博士のところに遊びに行ったことがあって、やはりオアワンクラゲ採集をいっしょにやったのだとか。それからそのY君の息子がうちの息子と塾で同じクラスというのがわかり、それから先日からある社屋ビルの記録写真を仕事として請けているのですが、じつはそのクライアントがY君のお母さんで、つまり下村博士の奥様のお姉さんだったわけで、さらにその方は私がイラストと装丁をさせていただいた児童小説「ナガサキのおばあちゃん」の登場人物の女の子のモデルになった方でありました。長崎せま〜い(笑)。で、その下村博士、ノーベル賞決定の一報を聞いてまず最初に「めんどうなことになった」と思ったのだそうです。人間できすぎです(笑)。