アートの話

コーヒーとBGMで確定されたイメージを基本にして、その他の要素のすがたを具体的に引っぱり出していく作業。何からいこうか。いや、その前に、もうひとつ基本的な確定要素を忘れていた。自分の中ではもう当然のことのようにあったので、基本要素としてあげることすら忘れていた。それはアートだ。個人的には美術のことをアートと呼ぶのにはかなり抵抗があるのだけども、いまどきそうも言っておれない。特にカフェに導入しようとするアート的要素は、ファインアートに限らず、それが意味するところの範囲をもう少し拡げたかたちという意味で、あえてアートという呼び方をしよう。私の今の職業はデザイナーだけど、いちおう絵を描いたり他の美術作品もつくったりするので、ド素人さんよりはアート畑に関しての知識や土地勘もあると思う。職業柄展覧会の企画や個展のプロデュースもできたりするので、カフェ豆ちゃんには是非このアートの要素を取り入れたいと思う。これは他人に依頼しなくてすむからいくらでも自分の好きなようにできるという強みがある。そして何よりそれが楽しみである。美味しいコーヒーとともに静かな空間で過ごせるだけの店なら他にいくらでもあるし、それだけならわざわざ自分でつくる意味はない。具体的に言えば、内装や家具のデザインにこだわるのはもちろんだが、これも資金力や集客力の限界があるので、現実的な範囲で何ができるかを考えよう。まずひとつは、お店の壁面の一部はギャラリーにしようと思っている。お店の壁面全体をギャラリーにするのではなく、あくまで一部のまとまった広さにちゃんとした作家の企画展をひと月ごとに開催するつもりだ。単におしゃれな絵を飾るとかそんなことではないし、誰にでも壁面を提供するような「なかよしギャラリー」にはしない。こちらでこの作家はと思う人に直接交渉し企画展の話を組み立てる。したがってギャラリー部分の壁面はちゃんとした作品がきちんと展示できるようなフラットでそれ専用の照明設備が必要になるし、美術館用の熱をもたない自然光に近い光を出すライトを、壁面のどこにでも自在にあてられるような仕組みにしないといけない。当然光量も無段階に調節可能のものをつける。カフェの全体の壁面は基本的にオフホワイトで統一する。ふたつめは、こうした企画展をするのであれば、そうしたものの告知が必要になる。これにはカフェ豆ちゃんの公式ホームページをつくり、ギャラリー情報のページでお知らせをする。単にだれそれの展覧会を開催しますという情報だけではなく、作品解説はもちろん、作家のインタビューも掲載して是非来店して実際の作品を見てもらいたいとのメッセージを発信する。場合によっては日時を決めてその作家のギャラリートークを行なったり、作家の書籍があればサイン会なども行なう。さらにホームページだけで紹介するのではなく、フリーペーパーを発行して、市内はもとより県下のアート関係の施設を中心に置いてもらう。カフェとアートの情報誌。それは営業目的のカッコ良さを演出するためのツールではなく、長崎のアートシーンが高いクオリティになっていくための起爆剤になればと思うのである。
このようにアートというキーワードだけで内装やイベントやその告知方法までが引っぱり出されてきた。このような方法で他の要素もじっくりと吟味しながら、しばらくは出てくるものを片っ端から出して、そのあとで必要最小限になるように削るだけ削って、最後に残る大切な要素に還元していこうと思う。つぎはコーヒーやその他のメニューに使用する食器類について考えよう。では、今日はこのへんで。