読書(したいと思う)の秋

やらなくちゃいけないことがたくさんあるなか、とりあえず小さなことはさっさとすまして、大きな仕事にじっくりとりかかろうと思いながらも、その小さなことが次から次へと出てくるので、大きな仕事がかなりあとあとにずれ込んでしまって、でもいよいよ大きな仕事にもガッツリとりかからなくてはと、多少焦りもあるカフェ豆店主でございます。で、そんなたいへんな中でも、ちょっとした時間をみつけては、それこそ5分でも3分でも暇があったら読んでるのは田口ランディさんの小説。いま、カバンの中には「富士山」が入っていて、デザインの仕事場には「コンセント」を置いていて、家に帰れば「アンテナ」が待っています。小説が読めない体質?のカフェ豆店主ですが、村上春樹さんと田口ランディさんの小説はなぜか読めるんです。村上春樹さんの小説もすべてというわけではなくて、とくに最近のものは読んでません。で、ランディさんの小説はおそらくみんな読むでしょう。なかなか読む機会がないので、それこそ1日に5ページとか10ページぐらいしか読む時間がなくても「読みたい!」と思えるんですね。以前、「告白」という小説をうちのカミさんが買って来たので、ためしに読んでみたのですが、世間が大騒ぎして、映画にもなって、ハリウッドでもリメイクの話が持ち上がっているとかいないとかまで話題になるほどのものかなあと思いました。田口ランディさんの短編小説に「樹海」というのがあって、中学3年生のちょっとませた男の子3人が卒業前に富士の樹海に泊まりに行って、そこで忘れられない体験をするという物語があるのですが、告白とちょっと似たような中学生に関わる物語で、私にはそっちのほうがものすごく面白かったです。というか面白い面白くないというより、なんというか物語の中にある空気の濃さがすごいと思います。う〜ん、うまく言えませんが、言葉の組み合わせとかタイミングで、言葉では表現できない空気を見事に伝えていると思います。ストーリーよりもそのことにここちよいスリルというか、読むものを夢中にさせる世界を広げているんだと思います。それよりもなによりもランディさんの小説の言葉の背後には、とても人間的な、というよりもっと大きなこの世界を包むような視点が感じられるんですね。「告白」のような時代の閉塞感とかをうまいこと表現したストーリーは、それこそ一般享けして話題にもなるのでしょうが、個人的にはランディさんの視点とか世界観がもっと評価されるといいのになあと思います。…なんかうまく言えないのがくやしい(笑)。

カフェはカフェでおかげさまで毎日いろんなお客様に来ていただいてありがたいです。あいかわらずお客様の8割、いや9割は女性の方です。20代前半のお嬢様から80代のおばあちゃままで、それぞれにカフェ豆の空間を楽しんでくださってます。店主としてはべつに女性向けにお店をつくったわけではありませんが、なんとなくそうなるんでしょうね。まあ、平日の昼間っからのんきにお茶してる男性って、フリーの仕事の人じゃないといませんよね。だから男性のお客様は、ほとんど女性の方に連れられてといった感じが多いようです。たまに男性が一人で来られて「エスプレッソ」とオーダーされると、ドキッとします。つまりこのようなお客様はだいたいコーヒーの味が目的で来られていらっしゃいますので、こちらもヘタなものは出せないゾ…と、心の中でアブラ汗をかきながらコーヒー豆をグラインダーで挽いて、マシンのホルダーに粉をプレスして、慎重にマシンから抽出されてくるコーヒーのクレマの様子と抽出時間をチェックします。いや決して普段手を抜いてるわけじゃないですよ(笑)。やることはいつも同じですが、緊張するんですね。長崎でも気軽にカフェに来てエスプレッソにグラニュー糖をそっと沈ませたままキュッと飲んでさらりと出て行くような粋な人が増えると素敵だなあと思います。カフェ豆のエスプレッソは世界最高水準と言われるスペシャルティコーヒーです。同じチンバリーのマシンを使っている大手のシアトル系カフェよりもめちゃめちゃ贅沢な豆を使っています。もちろんアメリカーノカフェラッテやキャラメルモカも、このスペシャルティコーヒーをチンバリーのマシンでいれたものです。悪魔のティラミスに使っているカステラにしみ込ませているコーヒーもそうだし、カフェ豆オリジナルのコーヒースムージーエスプレッソモーツアルト」もこのスペシャルティコーヒーを使っています。ほんとならもっと値段を上げてもちっともおかしくない贅沢な内容ですが、昨今の経済事情では無理なんですよね(トホホ)。でも、みなさんに「おいしい!」と言ってくださるのでなんとか頑張っていけてます。