偶然と必然の織物

毎日、いろいろな人と出会い、いろいろな出来事に遭遇する。かつて美術評論家宮川淳氏が「引用の織物」と比喩した時代を映し出す美術作品のように、目の前に繰り広げられる出来事そのものが、まるで偶然と必然を織り重ねた織物のように、事実として時代に刻み込まれていきます。一日一日の出来事がとても輝いて見える。それはやはり心ある人との出会い。それこそ邂逅という言葉によって表わされる、ただならぬ意思によるものごとの布置。はたして自分はどこにいるのか。そんなことをときどき自分に問いかけながらも、こうして無事に生かされていることへの感謝で胸がいっぱいになることがあります。うまいことたちまわって世の中を切り抜けようとか、このあたりのリスクの一番少なそうな道を選んでやっていこうとか、そのときはいいかもしれないが、あとになって、つまり社会をつくっていく立場から、社会から保護される立場へ変わったときに後悔するような生き方はしないようにしたい。この歳になるとそんなふうに思うのかもしれません。