コーヒーの味は秒単位の勝負

カフェ豆の入り口に貼っているメニューとランチの張り紙は、文字通り紙でできているので、今日のように雨が降るといっぱつでぐしゃぐしゃになってしまいます。お昼過ぎてから雨があがったので新しく張り紙を出力して貼っていたら、また雨でぐしょぐしょになって、暗くなってからはもうなくてもいいやと思ってはずしたまんまにしています。きっと通りすがりの人は何の店かもわかりますまい(笑)。雨で寒くて看板もなくて、これでお客さんが来るわけない。案の定、知った人と、知り合いから教えてもらって来ましたというお客様だけでした。それでも来ていただいたお客様、ほんとうにありがとうございます。それでも今日は暇なのでパンとコーヒーの話を書きますね。
いつも焼きたてのパンを写真に撮ってここに紹介しようとは思うのですが、パンが焼き上がるお昼前後は写真なんか撮っている場合ではありません。でランチが一段落したころはパンがなかったり、あっても焼きたてとは見栄えが違いますので写真に撮る気がしなくなる。べつに2時間程度で味がおちるわけではないのですが、あのオーブンから出してすぐのツヤッツヤのほっかほかのふわふわパンに勝るものはありません。カステラも切って30分もすればあきらかに味が落ちます。パンは切らない限りはそこまで乾燥しないので味はかなり保てるのです。ちょうどミカンを切ってほったらかしておくとすぐに表面がガビガビになるのと同じですね。
さてコーヒーはどうでしょう。つい2・3年前まではコーヒが嫌いだった私は、つまり不味いコーヒーしか飲んだことがなかったわけで、うまいコーヒー、つまり挽きたてのスペシャルティコーヒーをエスプレッソで飲んだときの感動が今のカフェまでつくらしたのですから。で、コーヒー豆も当然時間の経過とともに味が落ちます。はじめはそんなに違いがわからなかったのが、だんだん細かいところに気がつくようになってわかったのが、コーヒー豆は秒単位で味が変わるということです。もちろん新鮮であれば美味しいのは当然ですが、挽いた豆を30分も放っておくとマシンで抽出したときにでるキャラメル色の泡クレマの立ち方がちがうのです。クレマの立ち方が違うということは、当然コーヒーそのものの味も違う。だから豆の挽きだめなんてもってのほかです。それからマシンで抽出したコーヒーは5分もたつとあきらかに見た目から違います。とうぜん味も変わります。だんだん苦くなります。エスプレッソはドリップ式とくらべて風味がいつまでも保てて、冷めてもおいしいと言われています。それは確かにそうなのですが、やはり挽きたての豆を抽出したすぐのコーヒーには逆立ちしてもかないません。ちなみに抽出してすぐのエスプレッソにスチームドミルクを注いだカフェラテと、抽出して10分してからスチームドミルクを注いだカフェラテではかなり味が違います。すぐに注いだものがやっぱりおいしい。注いでいる途中のミルクとの混ざり方が見ていてまったく違うのです。抽出したてのエスプレッソがミルクと混ざる様子はいかにも「おいしいぞー!」って感じで混ざってくれます。しばらく経ったとはいっても10分くらいのことなんですが、ミルクとの混ざり方が「仕方ないから混ざってやるよ」といったふうな大橋巨泉みたいな態度です(笑)。だからカフェ豆では、挽きたてで抽出したてのコーヒーしか出しません。アイスコーヒーの場合、抽出した熱いエスプレッソを氷で急激に冷やしてお出しします。そうすると味が落ちません。アイスカフェラテも同じ。絶対につくりだめをしないから美味しいんです。オーダーをいただいて冷蔵庫からコーヒー豆を出してグラインダーに入れます。グラインダーのスイッチを入れて細かい粉(この粉の細かさ具合もめちゃめちゃ微妙なんです)になった豆をマシンのシリンダーに入れ、タンパーという道具でしっかりと均一に圧力をかけます。それからそのシリンダーをマシンにセットしてスイッチオン。この間の数秒の時間で味が変わるのです。ぼやぼやしていたらきれいなクレマが現われません。できれば粉になってお湯が通るまで空気に触れさせない方法があればいのですがそうもいきません。だからこの作業は秒単位の勝負です。タンパーでの圧力のかけかたが悪いとマシンからはじゃばじゃばと薄いコーヒーが出過ぎたり、濃すぎて出てこなかったりと、とってもデリケートな機械です。カフェ豆にあるのはイタリアの最高級マシン、ラ・チンバリーというメーカーのなかでもいちばん小さなもので、大きなものは大手チェーン店がつかっているもので、一日に何百杯も抽出しなければならない大きな店ではそれが必要で、カフェ豆のような小さな店ではこの大きさで十分でおつりが来るくらいです。大きなマシンは誰がやってもうまく抽出したりミルクをスチームしたりできるそうですが、この小型マシンはかなり使う人の腕前で違うのだそうです。小さいマシンを使ってから大きなマシンを使うと上達したような気になるそうですが、それはマシンの仕業であって腕が上がったのではないそうな。逆を言うと小さなマシンのほうが使い手の実力が発揮できて、もっともっと美味しいコーヒーが期待できるというわけです。カフェ豆はお店を広くしない限りはこのマシンで十分なので、このマシンの性能を十分に引き出せるようまだまだ頑張ろうと思います。最強の豆に最強のマシン。これに腕をついていかせなければなりません。もっともっと美味しいコーヒーをめざして、カフェ豆は努力します。(なんか選挙演説みたい)さあ、ここまでこだわるコーヒーですが、これ以上のコーヒを望めるのかというと、へっへっへ…じつはあるんですなあ(笑)。とは言ってもあとはいい豆を使うしかありません。つまりいい豆はそれなりの値段がする。カフェ豆にもすごい高い豆をときどき置いてます。高いのでメニューには入れていません。メニューに入れてもひとくち1000円のコーヒーなんて誰もオーダーしませんからね(笑)。どんな味かと言うと日本酒の大吟醸ってとこでしょうか。口元をすっとすり抜けたあと全身がコーヒーになったような感覚はやはり大吟醸とよく似ています。普段エスプレッソを飲みつけない人にとっては、濃いけど飲みやすいコーヒーぐらいしかわからんでしょう。来年は、この極上エスプレッソがわかってもらえるような方向でやっていけたらいいなあと思っています。少量で高い豆もオーダーが増えれば価格を抑えられて適正な値段で提供できますからね。もしかしたら来年のカフェ豆のコーヒーは凄いことになるかも!

おかげさまで2月15日(土)午後3時からのイベント「カステラを食べながらカステラと文学の話を聞く会」は毎日予約のお電話をいただき、そろそろいっぱいになってはきたのですが、せっかくのご要望になんとかお応えしなくてはと思い、よそから椅子を調達することにしました。カフェ豆はお店の広さに対して椅子が少なすぎるので、椅子さえあればあと10人くらいはじゅうぶん大丈夫なんです。ということで、もういっぱいだろうからと諦めているあなた!まだ大丈夫ですよ〜!予約のお電話、お待ちしています。TEL.095-825-4455